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November 10, 2004

INTA新潟 11/10~分科会・公共交通

かいです。

INTAも三日目。今日は、分科会。私は、4時から始まる。公共交通の分科会に参加。

会場は満員。結構関心が高いみたい。
DSC00600.JPG

分科会が始まる。パネラーは、高知工科大の寺部慎太郎氏と、名古屋大の加藤博和氏と、フランスから、建築家で交通問題にも取り組むジャックジョセフ・ブラック・ドゥ・ラ・ぺリエール氏、コーディネーターは、横浜国大の中村文彦氏。各人のプレゼンが始まる。

まず、高知工科大の寺部慎太郎氏が、高知の公共交通の現状と課題について、話す。
高知は、路面電車のある街。かいも、去年の春、高知を訪れ、路面電車に乗った経験がある。「はりまや橋」という言葉が出て懐かしい。都心部に軌道系の公共交通がある街は、街を巡るのに分かりやすく、旅行者にやさしい。
高知市街の路面電車は、日中でも数分間隔で運行されている。ただ、終電が遅い(22時)が難点。
そんな高知の街だが、他の街と同様に路面電車を利用する人が減っており、車依存型の都市交通体系になりつつある。との報告があった。尚、路面電車利用の中心は高齢女性だそうである。
その様な高知の路面電車の現状だが、問題点として、
床が高く乗りにくい。
ノーガード電停(道路と電停の仕切りがない)の存在。
更に、路面電車と同じ路線にバス会社が2社乗り入れてお客の奪い合いをやっている。
等が挙げられた。
解決策としては、
乗りやすい車両の導入。(低床車)
自動車との連携。(パークアンドライド)
マーケティング戦略。
等が挙げられた。
私は、やはり、公共交通の復権には、待たずに乗れるサービスが重要だと思う。車両の運行コストを引き下げ、数分間隔で、走らせるサービスが必要だと思う。
あと、新潟でも、LRTを導入する事が検討されているが、道路計画との関連を考える必要があると思う。高知のノーガード電停の話は、0から軌道系の交通を入れようとしている、新潟にとって、考える必要がある話だと思う。

次に、名古屋大の加藤博和氏より、公共交通の運営について話がある。

まず、地元の岐阜市の現状について話がある。岐阜市も名鉄が、路面電車を走らせているがが、車の台頭でとうとう、廃止が決まったそうである。そこから、導き出されるものの一つとして、公共交通は、営利事業では成り立たなくなっているということである。
そんな中、事業の担い手として注目されているのがNPOである。交通事業の担い手としてのNPOについて、私は当初、担い手としてふさわしいのか少々疑問に思ったものだが、加藤氏の話を聞いていくうちに、NPOこそ、交通事業の担い手にふさわしいと思うようになった。
NPOは、非営利事業である。社会に必要だが、営利事業としては成り立たないものを運営していくものとして期待されている。公共交通が、採算が合わなくなってきている今、NPOの特性を生かし、運営主体として育てていく事が必要だろう。
今回の加藤氏の発表では、東海地方(三重県)のNPOによるバス事業の運営事例が2例ほど紹介された。
地域住民が運営主体となり、通勤者を抱えている地元企業や行政等の支援を受けて運営しているそうである。このような取り組みは、新交通システムの導入を考えている新潟にとって、運営主体すら決まっていない今、よく研究していく必要があるであろう。

更に、加藤氏は、市民、行政、事業者の各ファクターの問題点を挙げる。
市民については、公共交通は、お上から授けられるものとして、自分の問題として考えていないとの指摘があった。
市民には当事者意識が無く、無関心、無責任であるということが、公共交通の衰退に拍車をかけているとの指摘があった。
行政には、お金の出し方に工夫が無い事、交通行政という戦略的視点が欠けているとの指摘があった。
許認可と赤字路線にただ補助金を出すという行政。出すなら戦略的に利用者のニーズを把握しながら、又、お金の出し方も事業者のみに補助金を出すのではなく、利用者側に顔を向けた補助が必要だとの指摘があった。
事業者には、利用者のニーズを捉えるようなサービス開発をまったく行っていないとの指摘があった。
普通の民間企業なら、新製品、新サービスの開発にしのぎを削っているが、こと、交通事業に関しては、その様な発想が全くないとの事である。系統、ダイヤ、運賃の見直し、新車両の開発等、利用者のニーズを捉えたサービス提供が求められるとの指摘があった。
最後に、市民、行政、事業者との調整、そして、公共交通を総合的にコーディネートする、「公共交通プロデューサー」が必要だという話があった。そして、現在、その様な人材は極めて不足しているのでその育成が急務であるという提言があった。

最後に、フランスのジャックジョセフ氏より、話があった。
ジャックジョセフ氏は、日本の公共交通の運営について、100年前の発想という厳しい指摘があった。
次に、世界の交通問題について、概念的な話が続く。
通訳を交えた説明は、私自身訳語に慣れていない為、分かりづらい。ちょうど翻訳本が読み辛く、途中で嫌になる感覚である。
しかし、新潟の様な中規模の都市の公共交通のスタイルはどうあるべきかについての話は、私の関心のテーマであるだけに、興味深く感じられた。
人口が、数十万の規模の都市の公共交通のスタイルは、地下鉄、簡易地下鉄(LRT地下鉄?)、路面電車の選択が非常に難しいとの話があった。
フランスでは、新潟クラスの都市でも地下鉄が導入されているとの話を聞く。新潟地下鉄論者の私にとって心強い。しかし、一方で、ボルドーは一本の地下鉄を作るのなら、同じお金で、路面電車を三路線走らせれれるという選択を行ったそうである。新潟の新交通の導入は、新潟の諸条件を考えながら、市民の合意を得て実現させるべきだろう。
あと、もう少し小規模な地域では、既存のインフラを活用する事が必要だとの話があった。
これは、新潟にも当てはまるのではないかと思う。現在、新潟ではJRでも、信越線、白新線、越後線とあるが、運行間隔、駅前広場の整備、バスとの連携でかなり便利になると思う。最近、私も越後線を利用したが白山駅で30分以上待たされてしまった。これは、施設の問題というより、運営の問題である。
あと、都市計画と、交通のリンクの必要性についても話があった。せっかく開発を行ったのに、交通が不便でうまくいかなかったり、逆に、交通が、利用しにくい場所にあるため、利用者がいない等、都市計画と交通は、一体的に考える必要があるとの指摘があった。又、都市交通の施設は、都市計画の中で、都市のランドマークとして、生かされるべきとの指摘があった。

あと、ジャックジョセフ氏の話の中で、興味深かったのは、ユニバーサルデザインについて、フランスは南欧とともに遅れているとの指摘があった。
我々は、どうしても、ヨーロッパは何事にも先進的であると考えがちだが、実際、ヨーロッパは南北様々な国の集合体である。我々は、きっと、ユニバーサルデザインについて、北欧の事例を見てヨーロッパ全体がそうなんだと思い込んでいるのかもしれない。面白い発見であった。

以上、三氏の発表が終わると、時間は予定終了時刻の6時を回っていた。
実に白熱した、中身の濃い論議でだった。
その後、延長し、質疑応答に入ったが、私は、所用があるので退席した。ずーっと聞いていたかったが残念。

この討議を私なりにまとめると、浮かんだキーワードは、戦略と連携だった。
都市交通問題を考えるとき、皆が、自分の狭い領域のみで考えていなかったか、他者との関係、連携を考えていなかったか。加藤氏がおっしゃった事を引用しながらまとめると、都市交通は、皆が、エレベーターやエスカレーターのように利用すべきものである。利用者が乗りやすく、使いやすいシステムを戦略的に、皆が連携し、考え、都市が育てていくべきではないだろうか。

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